

マクロファージという大型の貪食(どんしょく)細胞はその名のごとく体内に現れたがん細胞を食べて、そのかけらをがん細胞の情報としてヘルパーT細胞に渡します。
マクロファージの細胞表面に顔を出して、がん細胞のかけらを情報としてヘルパーT細胞に渡す蛋白分子をMHCクラスUと呼んでいます。ヘルパーT細胞はマクロファージのMHCクラスUを確認すると、多種類のインターロイキンを体内から放出すことで、キラーT細胞を活性化し増殖させます。またインターロイキンにはNK細胞も活性化させるなどの作用もあり、体内の免疫力を高めます。

我われの「からだ」は60兆個の細胞からできています。「自分のからだ」は、すべて「自分の細胞」です。自分の細胞は、自分であるという「パスポート」を持っています。このパスポートを「MHCクラスI」と呼びます。MHCクラスTは蛋白の分子で、赤血球を除くすべての細胞膜の表面に顔を出しています。がん細胞膜の表面にもMHCクラスIが顔を出しています。

リンパ球(キラーT細胞)だけでは、すべてのがん細胞を殺すことは不可能です。なぜならば、キラーT細胞は、MHCクラスTの自分自身を証明する「パスポート」を持っているがん細胞は殺すことができますが、多くの場合、がん細胞は自分自身を証明する「パスポート」を隠しているので、キラーT細胞は免疫系を活性化できてもすべてのがん細胞を殺すことができないのです。

NK細胞は、常に体内をパトロールし、がん細胞を見つけると直ちに攻撃を開始し、がん細胞を破壊します。NK細胞は、「パスポート」を持っているがん細胞も、隠しているがん細胞も見つけ出し、直接攻撃・破壊することができます。しかし時には、誰にでもあるように、ボーッとして「パスポート」を隠しているがん細胞を取り逃がしてしまうことがあります。

最近になって、キラーT細胞とNK細胞の問題を解決できるリンパ球の存在が明らかにされました。このリンパ球は、NKT細胞と呼ばれる新しいリンパ球です。
NKT細胞は、我われの末梢血リンパ球中に0.3%くらいしかありません。がんの患者様では、さらにその数は減少しています。しかし、このリンパ球は、がん細胞に対して極めて強力な攻撃力と殺傷力を持っています。NKT細胞は、自分自身を証明する「パスポート」を隠しているがん細胞、すなわち、透明人間のようながん細胞のみを見つけ出し、直接攻撃し、殺してしまいます。キラーT細胞やNK細胞が仕置きできなかったがん細胞を見つけ出し、殺してしまう、がんの治療には究極の助っ人です。

限られた細胞を用いた免疫療法には限界があります。単に、一つの免疫細胞の元気を回復し、数を増やすだけでは免疫力を十分に高めることはできません。免疫細胞間同士のつながりを考えると、免疫力を高めるには、リンパ球、NK細胞、NKT細胞が協力し合って働くことが必要です。
患者様のキラーT細胞、NK細胞だけでなく、NKT細胞も同時に培養によって活性化し、数を増やし、患者様の体内に戻すことによって免疫機能を再構築し、免疫力を高めてがん細胞への攻撃力を強化し、体内でのがん細胞増殖の抑制、再発・転移の予防を目的とした治療法が、当クリニックの「NKT細胞複合免疫療法」です。